社会に広く浸透する「省エネ対策」は、企業の取り組みとして非常に重要なものです。
無駄なエネルギーを減らして生産性を向上させていくという、一見すると難しい問題にも思えてきます。
しかし、実は企業にとって多くのメリットがあり、クールビズなど比較的簡単なものからシーリングファンなど費用対効果の大きい方法まで、たくさんあるのが「省エネ対策」です。
この記事では、企業が省エネ対策を行うメリット、省エネ対策に関連する各種補助金の制度、具体的な省エネ対策の方法や対策の事例などを詳しくご説明します。
それぞれの企業にあった省エネ対策の構築にお役立てください。
目次
省エネとは、より少ないエネルギーで経済効果を生みだすことです。
そして、企業が省エネ対策を行うことはエネルギーの効率化はもとより、社員モチベーションや社会的認知度の向上など多くのシナジー効果も見込むことができ、メリットの多い企業戦略の一環ともなります。
企業が省エネ対策を実施することで得られる4つのメリットをご紹介していきます。
省エネ対策による大きなシナジーを期待できるものとして「企業のイメージアップ」があげられます。
単純に省エネを促進している企業と、省エネを気にしていない企業とでは、エコな現代で世間に与えるイメージが大きく変わります。
省エネ対策を行い、環境問題や社会全体のエネルギー効率の向上などに貢献することは、企業のイメージアップに大きな効果が期待できるというメリットがあるのです。
省エネ対策を行うことで企業のイメージアップにつなげていきましょう。
省エネを促進して無駄を削減することはコスト削減というメリットも生みだします。
例えば、不要な電気は使わない、紙媒体のデジタル化などは身近な省エネ対策となり、ランニングコストの削減にもつながります。
社内の無駄を省くことはエネルギーの無駄を省くことにつながるため、生産性向上の観点からも企業として積極的に取り組むべき項目です。
なお、ランニングコストの削減に関わる省エネ対策は選択肢も様々なので、手軽に自社に合った取り組みを試すことができます。
企業や代表者が省エネに向けて率先して指導力を発揮することにより、社員の環境に対する意識を変えるきっかけにもなります。
省エネ対策は環境への配慮に直結するため社員にも受け入れやすく、環境への意識がモチベーションの向上につながることも少なくありません。
また、環境を意識する社員がふえれば社員の意識が社会に伝わり、会社のイメージアップへとつながります。
社員が環境に対して高い意識を持つことで得られる相乗効果は、場合によって非常に大きなものとなるでしょう。
近年では省エネに関する多くの補助金や助成金が整備されています。
日本では厳しいエネルギー事業に対応すべく、1979年に制定された「省エネ法」に基づき様々な対策が行われてきた歴史があります。
国策とも言うべき省エネを促進させるために、補助金や助成金が整備されました。
現在、省エネを推進する企業が補助金を受けられる複数の制度が存在するので、事業促進の手助けとなります。
企業が受けられる省エネ補助金は各方面において整備されています。
ここでは、企業が省エネ対策を行う際に受けられる補助金の例をいくつかご紹介します。
国が法令に基づき推進する「省エネ」は企業の協力なくしては発展しません。
つまり、企業に対し国が多くのメリットを整備することで、企業が省エネ対策を実行しやすい環境を整備してきたとも言えます。
企業が省エネ対策を行うためには一定のコストを掛ける場合もあるでしょうが、補助金などを最大限に活用すれば、企業内の省エネ促進もハードルを下げることができるでしょう。
なお、建築物省エネ法など多くの断熱基準は「等級4」であることを念頭に置いておきましょう。
省エネルギー投資促進支援事業費補助金とは、企業などによる省エネ性能の高い設備への更新に対する費用支援です。
対象者 | 国内で事業を営む法人または個人事業主 |
補助対象事業 | Ⓐ先進事業 Ⓑオーダーメイド型事業 Ⓒ指定設備導入事業 Ⓓエネマネ事業 |
補助金 | Ⓐ・Ⓑ事業施設年数✕100万円~15億円/年度 Ⓒ20万円/事業全体~1億円/年度 Ⓓ100万円/事業全体~1億円/年度 |
公募期間 | 2 |
詳細はこちら→一般社団法人 環境共創イニシアチブ発行 パンフレット
先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金は、省エネ設備への入れ替え支援にも適用されます。
工場や施設内の設備を入れ替える際などに該当する設備には補助金を活用できることを確認しましょう。
入れ替え支援の対象となる設備一覧
ユーティリティ設備 | ・高効率空調 ・産業ヒートポンプ ・業務用給湯器 ・高性能ボイラ ・高効率コージェネレーション ・変圧器 ・冷凍冷蔵設備 ・産業用モータ ・調光制御設備 |
生産設備 | ・工作機械 ・プラスチック加工機械 ・プレス機械 ・印刷機械 ・ダイカストマシン |
住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業費補助金は、経済産業省が推進するZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)/ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を促進するための補助金制度です。
対象者 | 次世代省エネ建材を用いた住宅・建築物の断熱リフォームを行う補助事業者 |
補助対象事業 | ①ZEBの実証 ②ZEHの実証 ③次世代省エネ建材の実証 |
補助金 | ①補助対象経費の2/3(上限:5億円/年) ②補助対象経費の2/3 ③補助対象経費の1/2 |
公募期間 |
中小企業等に対するエネルギー利用最適化推進事業費補助金は、エネルギー利用の最適化に向けた診断や情報提供、省エネへの取り組み支援を目的とした事業において、IoTの活用やプラットホームの構築などをサポートする補助金です。
対象者 | エネルギー利用の最適化診断・情報提供、地域プラットフォームの構築を行う中小企業 |
補助対象事業 | エネルギー診断、設備運用の改善、セミナー講師派遣プラットホームとの連携や構築など |
補助金 | 419,465千円を上限とした定額補助 |
公募期間 | 毎年1月から2月の公募 |
ZEB実証事業は環境省や経産省が主体となり、ZEB事業(省エネにより、エネルギーの使用量を正味0または概ね0にする事業)の実施者に対して補助金を給付する制度です。
先に紹介した「住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業費補助金」などもZEB実証事業の補助金に該当します。
その他にも省エネを対象とした複数の補助金、助成金、支援制度があります。
例えば、中小企業を対象とした「省エネ最適化診断・IoT診断」を活用すれば安価で診断や情報提供を受け、省エネ対策に活用できます。
省エネ設備の導入などを利子補給で支援する「省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金」なども省エネ環境の構築に役立つでしょう。
その他、輸送や技術研究など各方面の支援が経済産業省資源エネルギー庁主導で実施されています。
詳細はこちら→経済産業省資源エネルギー庁HP「事業者向け省エネ関連情報/各種支援制度」
ここからは企業・法人で取り組める具体的な省エネ対策をご紹介します。
すぐにでも実施できる省エネ対策ですが、一定規模の省エネを実現するためには社員の意識改革が必要な場合もあるでしょう。
基本的な省エネ対策を再度確認して、企業としての取り組みにご活用ください。
電気に関する対策はランニングコストに与える影響や環境への配慮という意味でも、効果の大きい省エネ対策です。取り組み方次第で、社員個々の実施率の改善や設備の改良などが見込める部分でもあります。
基本的な次の3つをチェックしていきましょう。
こまめに電気を消すという当たり前に思える省エネ対策ですが、社員の心がけや実施率を一度再確認をしてみることをおすすめします。
実はうっかり電気を消し忘れていたというのはよくあることですが、常態化しないように定期的に意識づけを行うことで改善されるものです。
また、昼休憩の1時間を消灯することで、2〜3%程度のエネルギー削減につながるし、トイレなどをセンサー付きの照明にすれば消し忘れもありません。
基本的なことですが、見直しや工夫の余地がある部分と言えます。
エレベーターではなく階段で上下階を移動することもエネルギー削減につながります。
もちろん無理に階段を使用し体調を害するような方法は推奨はできませんし、勤務時間内の階段移動は非効率なので、勤務時間外のみの階段活用や上下2階までなどの制限を設けましょう。
個人の適切な健康への意識が自然と省エネに紐づくことで無理のない省エネ対策となります。
オフィスや工場、店舗などでは照明が占めるエネルギー消費の割合が比較的高くなっています。
社内の照明設備に蛍光灯などを使用しているのであれば、LEDへの変更がおすすめです。
資源エネルギー庁の推計によると、オフィス照明のエネルギー消費が全体のエネルギー消費に占める割合は夏季で24%、冬季では33%にもなり、小売店などではさらに数%増加しています。
照明はエネルギーの高い割合を占めるため、改善できれば大きなエネルギー削減になり、電気料金の削減にも大きく貢献してくれるでしょう。
簡単にできる省エネ対策として、空調にも目を向けてみましょう。
空調の管理も今や広く知られた省エネ対策であり、電気と同様にすぐに着手できる対策でもあります。
今日から始められる、空調に関する省エネ対策をチェックします。
室内の温度を管理することで必要以上に消費しているエネルギーを減らすことができます。
環境省ではクールビズの推進に伴い、室内温度を28℃として推奨してきました。
軽装により体感気温を調整することで空調のエネルギー消費を削減できるという観点から28℃が推奨されてます。
設備などの規模によっては設定温度が1度変わるだけでも大きな変化となり、部屋によっても熱量は違うため、個別に調整することで効果も高まる省エネ対策です。
さらに室内にシーリングファンを設置すると空気の循環がうまれ、エネルギー消費量を抑えつつ室内の温度を調整することも可能なのでおすすめです。
温度管理は企業の生産性にも関わる部分なので、適切な温度調整で省エネを目指しましょう。
なお、エアコンの設定温度ではなく室内の温度という点に注目が必要です。
空調を利用する場所を制限することで、必要以上に使用していたエネルギー消費を緩和することができます。
一部の空調を間引いて使用する、就業の30分前にエアコンを停止する、起動時間をずらしてピークエネルギーを抑制するなど、環境に応じて制限するとさらに効果的です。
また、シーリングファンなどを併用すると空調効率が向上し、より省エネ効果も高くなるので、併用することをおすすめします。
社内ルールとして従業員に関する省エネ対策を取り入れてみましょう。
一見、変化が少ない内容に思えることが、有効な省エネ対策になっている場合もあります。
もはや季節の風物詩とも言えるクールビズ&ウォームビズですが、環境対策として推奨されるものであり、省エネと表裏一体の対策です。
空調の温度管理と合わせて考えられるものですが、社員の意識を向上させる意味でも非常に有効な方法となるでしょう。
一定のルールを定めると、より効果的です。
これまで紹介した、電気の対策、空調管理、クールビズ、その他多くの省エネ対策は従業員の意識でその効果が大きく変動する可能性があります。
企業として、省エネを推奨するビジョンと行動を明確にして示し促進することで、初めて成功する部分は大きいのです。
ここからは具体的な省エネ対策の事例を3つご紹介します。
自社に合った取り組みにより、環境対策や生産性の向上にもつながった好例として紹介しています。
省エネ対策に取り組む際の参考としてご活用ください。
電力における省エネ対策として、太陽光発電・蓄電池・LED化・空調の効率化などがあり、大きな成果を生みやすい分野です。
大型の工場やビルであれば太陽光発電は大きな存在感を見せてくれるでしょうし、LEDや空調の効率化は比較的導入しやすい電気設備とも言えます。
例えば、東京メトロでは本社ビル、総合研修訓練センターの電力CO2排出の実質ゼロを目指し、太陽光発電などの再生可能エネルギーへの移行を目指しています。
外装や内装、サッシなどに手を加えることで空調の効率を向上させることも可能です。
また、エネルギー効率の高い最新の機器を導入することも省エネ対策ばかりか作業効率を向上させてくれる場合もあります。
設備投資には多額の費用が掛かることもありますが、補助金などを上手く活用することで経済的に省エネ対策を実施していくことが可能です。
例えば、久光製薬ミュージアムではLow-Eガラスにより熱負荷を大幅に軽減し、建物のデザインを重視しつつもZEBを実現しています。
社内の省エネ対策に関する仕組みづくりをしてみましょう。仕組みづくりの前にビジョンを打ち出すことは非常に重要です。
まずは、歯車を組み立てる必要があります。(一例)
・省エネ調査の実施
・推進計画の策定
・社内の省エネ担当者の選任
・省エネチェックシートなどを導入
・成果をみえる化する
そして意識づけをすることで、その歯車を回していきます。
例えば、トヨタ自動車では「トヨタ環境チャレンジ2050」を掲げ、省エネを含む環境への取り組みを分かりやすく示しています。
大型シーリングファン(HVLSファン)とは空間内の空気を効率よく循環させる空調機器です。
扇風機のようにスポットで空気を送るのではなく、室内全体の空気を流動させ温度や湿度を一定にしてくれるシーリングファンには次のようなメリットがあります。
・暑さの軽減
室内の空気が流動するので体感温度が低下し、暑さ対策として有効です。
・結露の軽減
空気を均一にするため湿気の濃淡を減らし、空気の流動により乾燥の効果もあります。
・カビ・サビ対策
湿度を均一にすることで湿気の滞留を防ぎ、カビやサビの発生を抑制する効果があります。
・換気効果
室内で空気が流動することにより、窓などから空気を排出し、新しい空気を循環させる効果があります。
・省エネ効果
ファンを回すだけなので、エアコンなどの空調機器と比べると電気代のコストは大きく軽減されます。
また、エアコンなどの空調機器と併用すれば設定温度や風量を減らすこともでき、省エネ効果も抜群です。
注意点としてシーリングファンの暑さ軽減の効果は空気の循環によるものなので、強制的に室温を変化させるエアコンなどとは性質が違うことには留意が必要です。
[小見出し]事例1
運輸倉庫業 N 社様
暑さ対策として活躍。
3階建て倉庫最上階の天井に設置することで空間全体に自然な気流が生まれ、働く従業員の夏場の暑さ対策として好評。
床置きの大型扇風機との交換によりコストも削減でき、レイアウトの自由度も高まることで、コスト面や作業効率面で省エネを達成。
大手油圧機器製造 T社様
空調効率が向上。
天井高が約10Mの工場で暖房を行う際に建物上層部に空気が滞留してしまい、全体が温まらず暖房効果が低いという問題を解決するために大型シーリングファンを導入。
導入後は全体の温度ムラが軽減したことにより暖房効率も向上し、省エネ化を実現。
倉庫・運輸業 S社様
快適な作業場の構築。
暑さ対策をメインにテナント様の作業環境を向上させる方法を検討。
選択肢が多い中で大型シーリングファンの大風量、省エネ性、メンテナンスフリーな点は導入を決意。
夏場の暑さ対策はもちろん、環境の向上、省エネ、人材の獲得などの+αの多い結果となった。
企業や法人にとって「省エネ対策」が持つメリットは非常に大きなものです。
そして、国策として推進される「省エネ対策」には補助金や助成金など、実際に取り組む事業者のハードルを下げてくれる手助けも行われています。
「省エネ対策」の選択肢はいくつもありますが、まずはコスパよく確実に効果がある方法を“具体的に決めて実践してみる”ことをおすすめします。
例えば、社内の意識改革として、エネルギー消費を下げるために節電計画を作り周知する。
そして設備面においては、仕事環境やモチベーション向上のために大型シーリングファンを導入してみましょう。
このような、省エネ対策+αの効果を持つ方法なら従業員の賛同も得られやすくなります。
「省エネが持つ可能性」を最大限に活用することで、新たな経営戦略のヒントをつかみましょう。
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